相続手続の必要書類について
相続が発生すると、故人名義の口座を何とかしないといけないですよね?
そう思ってとりあえず銀行に行ったとしても、窓口の担当者から「ではこの所定の書式に相続人全員で署名し実印で押印した上で、相続人全員の印鑑証明書を用意してください。その他に、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍の一式と、相続人全員の現在の戸籍も用意してください」と言われてしまい、その日のうちに解約したり払戻しを受けることはできません。
他の財産の名義変更や解約をしようとしても、大体同じ書類が必要と言われます。
本コラムでは、上記の例を使い、銀行の担当者が言っていた必要書類の意味について説明していきます。
銀行の担当者が言っていた書類とは何だったでしょうか。
(1)所定の書式 ≒ 遺産分割協議書
(2)相続人全員の印鑑証明書
(3)故人の出生から死亡までの戸籍一式
(4)相続人全員の現在戸籍
以上ですね。この4種はどこも必要になることが多いです。
このうち、(1)については、所定の書式に代わり、「遺産分割協議書」を作成し、その中に遺産の内容と誰が相続するかをちゃんと記載すれば大体は問題ありません。
名義変更したい財産や手続の窓口ごとにそれぞれの書式があって、普通にやろうとすれば大変なので、遺産が複数種類ある場合は、一度の手間で済ませられるよう、遺産分割協議書を作っておくとよいでしょう。
では、個別にご説明していきます。なお、手続の内容によっては上記(1)~(4)以外の書類も必要となる場合も当然ありますので、事前に確認はしておくと良いでしょう。
(1)所定の書式 ≒ 遺産分割協議書
金融機関としては、故人の預貯金の解約(払戻し)をする場合、二重払いや誤った受取人に払い戻すのを防ぐため、その預貯金を受け取る人が相続人の全員でちゃんと決めているのかを確認します。
その確認のため、遺産分割協議書や所定の書式(相続届などと呼ばれていることもあります)に相続人全員の記名押印が必要となります。
この書類に押す印鑑は相続人の意思を確認するためのものですので「実印」が必要となります。なお、もし相続人のうち一部に人が漏れていた、または相続人でない人が協議に参加していた場合は、その協議は無効となります。
記載事項は、故人の住所氏名、受け取る相続人の住所氏名押印、その他の相続人全員の住所氏名押印、解約したい故人名義の口座番号等になります。
(2)相続人全員の印鑑証明書
(1)の書類には「実印」が必要と書きました。とすると当然、捺印された印鑑が実印であるか確認が必要になるので、捺印した相続人全員の印鑑証明書が必要になるので、相続人の皆様に住所地の役所などで印鑑証明書を取得してもらいます。
なお、手続の申出先によっては印鑑証明書の有効期限があります。金融機関の場合、実務上は発行から3か月以内か6か月以内のところが多いようです。特に3か月は結構短いですので、他の相続人に早めに取得してもらっていたら、実際に解約しようとした日には期限切れになっていた。。ということもありますので気を付けましょう。
ちなみに、実は不動産の相続登記の際に使う印鑑証明書には有効期限がありません。
実務上、何年も前に分割協議が成立していて当時の協議書もあるという事例では、当時の印鑑証明書を利用して相続登記した、、なんてこともあります。
(3)故人の出生から死亡までの戸籍一式
戸籍がなぜ必要かというと、故人の相続人が誰で、全部で何名いるかを、戸籍の記載から確定するためです。つまり、(1)の書類に記名押印した相続人が、本当に個人の相続人の全員であるかを、戸籍の記載を通じて確認します。
なお、相続人の範囲は法律で決まっていますが、戸籍を通じた相続人の確認の仕方は、また後日解説したいと思います。
(4)相続人全員の現在戸籍
(1)~(3)が必要な理由は何となく知っている方も多いと思いますが、相続人全員の戸籍が必要な理由もご存じでしょうか。これも、(3)の相続人の確定に関連して必要な書類です。というのも、(3)で確認できた推定相続人ですが、除籍されて別の戸籍に入っていた場合、その人が相続開始時点で存命かどうかわからないからです。
そのため、被相続人の戸籍を見て、相続人らしき人がわかったら、その人の現在の戸籍を確認して、存命か、それとも二次相続が発生しているかを確認するのです。
そのため、この現在戸籍は最低でも、被相続人死亡より後に取得したものであることを要します。(金融機関によってはさらに有効期限を設けているところもあります。)
なぜ、相続手続でいろいろな書類が必要になるか、何となくイメージできたでしょうか。
それでは、次回のコラムでは、「じゃあ、戸籍ってどうやって集めればいいの!?」ということについて話していきたいと思います。