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遺産分割協議のお話②

1 遺産分割協議の方法 ~前提~

遺産分割協議をする場合、必ずやっておくべきことが2点あります。1点目は、上でも述べた「相続人の確定」です。相続人に過不足があると、その協議は原則として無効になります。そのため、相続人の確定は、手続きを進めるうえで最も注意すべきことになります。

2つ目は、「遺産の確定」です。遺産がどれくらいあるかをちゃんと確認しないまま協議をしてしまうと、例えば後で多額の遺産が出てきた場合、その遺産の存在を知らなかった他の相続人から、遺産分割協議のやり直しを求められるかもしれません。また、しっかり調査をせず遺産分割協議を済ませてしまっていると、調べればすぐわかる多額の負債があった時などに、相続の放棄ができなくなってしまうこともあります。このようなトラブルを避けるためにも、遺産分割協議は、人(相続人)・モノ(遺産)をしっかり確定させてから始めるようにしましょう。

2 遺産分割協議 ~協議~

ではいよいよ、遺産分割の協議をどのように進めることになるのかですが、協議の方法は大きく分けて4種類、①「共有分割」②「現物分割」③「代償分割」④「換価分割」があります。

実際には、これらを組み合わせた協議内容になることがほとんどですが、基本となるこの4つの分割方法をしっかり理解しておくことが、適切な分割協議への近道へとなります。

① 共有分割

 文字通り、遺産の全部または一部を各相続人の法定相続分もしくは合意した割合で相続して共有する方法です。これは、不動産等の相続でたまに希望される方がいらっしゃいます。

公平な分割方法であることは間違いないのですが、個人的にはあまり良い方法ではないと思っています。財産を共有で持った場合、その後の管理責任は全員が追うことになりますし、処分したい時にも共有者全員で行わなければならなくなります。また、二次相続が発生していくにつれどんどん権利関係が複雑になっていく可能性もあります。この方法をどうしても取りたい場合は、少なくとも相続した後の管理方法や処分方法について、あらかじめ相続人間でしっかりと相談しておくことを推奨します。

② 現物分割

 A不動産は長男に、B不動産は長女に、預貯金は妻に、というように、財産を個別に各相続人が取得する方法です。権利関係がはっきりするのでわかりやすい分割方法です。

一方で、法定相続分を基礎とした公平な分割をしたいと思っていた場合は、個々の財産の価値が異なるので少々やりにくいという側面もあります。

実務的には一番多い方法かもしれません。次の代償分割と組み合わせてする場合も多いです。

③ 代償分割

例えば、A不動産を長男が相続する代わりに、ほかの相続人である長女に金○○円を支払う、といったように、自分の相続する財産が多額すぎる場合に、ほかの相続人に対して、その財産取得の代わりとして(代償)金銭を支払う旨の協議を言います。

これも結構多いです。先ほどの不動産もそうなのですが、他によく使われる条項として、「相続財産のすべてを長男が相続する。その代償として相続人である長女に金○○円を支払う」というものがあります。実務的にも応用のきくやり方なのでよく使われますが、この応用例はまた別のコラムでピックアップしたいと思います。

④ 換価分割

①~③に比べると少し特殊な方法で、相続財産を売却して、その売却代金を分割する方法です。典型例は、相続財産の主だったものが不動産しかなく、相続人の誰も不動産のまま相続することを希望しなかった場合にこの方法がとられます。また、株式や有価証券を相続手続きの一環で売却してしまうことも、この方法に属します。ただ、この方法は注意しないと法的な面や税務的な面で思わぬ弊害を生むこともあるので、専門家に相談しながら進めることを推奨します。これも、別のコラムで改めて取り上げたいと思います。

以上の4つの遺産分割方法を、それぞれの事情に応じて最適に組み合わせていくことで遺産分割協議が成立します。

その後、成立した遺産分割協議に基づいて、各相続人への名義変更や、財産の分配を進めていくことになります。

それぞれの家の事情に合わせた、適切な方法で遺産分割協議を進めることが、その後のトラブルの防止になるので、時には専門家に相談することも考えながら、協議を進めていきましょう。

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事業所名 さくやま司法書士事務所
代表者 作山 智彦 Tomohiko Sakuyama
昭和59年生 岩手県盛岡市出身
岩手県司法書士会所属 登録番号第398号
簡裁訴訟代理関係業務認定 第1637005号
(公社)成年後見センター・リーガルサポート 会員
(一社)民事信託推進センター 会員
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